2011年6月10日金曜日

カラスの襲撃

 ヒッチコックの映画に「鳥」という名作がある。40数年前、僕が学生だった頃に公開された。筋書きはもうすっかり忘れてしまったが、圧倒的な数の鳥が集団で人間に襲いかかってくる場面は、いまもよく覚えている。映画館の座席に座った自分が襲われているような迫力、臨場感。思わず頭を抱えてその襲撃を避けようとした瞬間までが記憶に残っている。
 それから40数年。映画の中の話が現実になった。僕が住んでいる西宮市段上町で、カラスがお年寄りや小学生を襲撃する事件が起きたのである。その場面を目撃していた小学生や近所の人たちからの伝聞をまとめると、事件が起きたのは1週間ほど前。段上町5丁目のNTTの建物の屋上付近にいたカラスがいきなり近くの道を歩いていたおばあさんに襲い掛かった。おばあさんは頭をつつかれ、血が流れた。学校から帰宅途中の小学生にも威嚇するように襲い掛かり、子供たちが逃げ惑った。通報を受けた学校から先生が駆けつけ、子供たちの下校を見守った。ざっとこういう話だった。
なぜ、こんなことが起きたのか、という説明になると、聞く相手によって互に食い違うが、僕が聞いたのは①カラスがNTTビルの屋上のアンテナ付近に巣を作り、雛を育てた②その雛を守るために、近くを通りかかる人を無差別に攻撃した、という話だった。その背景には、最近、住宅地にカラスが急増していること、挙句に山や森ではなく、人間の生活圏にまで巣を作るようになったことがあるのだろう。
実際、関西学院の上ケ原キャンパスにもカラスがいっぱい住み着いている。4月のある日、第3フィールド周辺を一人で散歩していたとき(その日はアメフット部が練習していなかった)、あまりに多くのカラスがグラウンドに降りているので、その数を数えたら40羽近かった。それが一斉にカアカアと鳴き、我が物顔に飛び交っているのである。彼らの生態を眺めながら、ふと彼らの気が変わって僕の方に襲い掛かってきたら、まるでヒッチコックの映画だと思うと、急に恐ろしくなった。
そんな体験をしたばかりだったので、先週の「お年寄りが襲われ、頭から血を流していた」という話が他人事ではなかったのである。
カラスばかりではない。上ケ原キャンパスにはイノシシも出没している。中央芝生が荒らされたことがあるし、学生会館から第3フィールドに向かう途中にある八幡神社の境内でドングリをあさっている姿を見たこともある。いまや人間と野生生物とのテリトリーがぐちゃぐちゃになっているのである。本気で対策を考えないと、いまに大事故が起きるのではないかと、一人気を揉んでいる。(石)